秋。

季節は止まることなく進んでいく。

様々な思いを重ねて。

よいこともわるいことも、全てを重ねて秋は深まっていく。

そう、それは何かの信号。








 








「ったくよぉ・・・本当頭おかしいんじゃねーか?」




補習の合間。
成宮天十郎がいつもの通り文句を言う。



P2含め先生方はどうしても外せない会議とやらで補習は私1人。
相手は4人。
どう考えてもまともにやってくれないことはわかっているのでさほど厳しくしようとも思っていなかった。



お菓子を食べながらお茶を飲み。
適度に話をしながら補習を進める。



なんだかんだいってこの人たちにはしっかりとした体勢で勉強するなんて技は持っていないのだから逆に勉強は進んだりするのだが。
それに、これは私にとっても楽でいい。
たとえ知識があったからといって、勉強が好きというわけでは決してないから。



「ほんとなりよ~・・・ボクなんてぇ、補習だけでなく補講もあるんですぞー?」
「面倒で仕方ない」
「まぁ、ちょちょちょーっとやりすぎじゃない?あの王様たちさ」



他の3人も思い思いに話し出す。



まぁ、当然だ。



夏休みから今まで、ろくに休むことも許されずにひたすら補習。
正直、私だって逃げ出したい。


苦手なことばかりを強いられている彼らは私以上だろう。
違う意味で、感動を覚える。



「なぁ、おめーもそう思うだろ?」
「まぁ、やらなくていいのならやりたいなんて思わないわ。はい、ここ解いて」



話を聞くことは苦ではない。
勉強をある程度進めておかないと後がうるさいので、適度に問題を促しつつ耳を傾ける。



「ボクはぁ、お仕事が出来ればそれでいいのですピョン」



「んー、オレはダリアちゃんがやってくれるなら補習も悪くないけどね」



「面倒極まりない。もっとタメになることはあるだろう」



口々に言いたいことを話し始めていく。
その割に、渡した問題には取り組む姿はなんとも滑稽だ。



なんて変な集団だろう。
つくづくそう思う。
これで仲がいいというのも不思議だ。


そして、少しずつ深くなっている彼らの不満。


正直、ここで気付いてしっかり制しておけばよかったのかもしれない。





「・・・だぁー!!もう疲れたー!波に乗りてぇ!!!」
「天、黙れ。うるさい」





しばらくして耐え切れずに叫ぶ成宮天十郎を、不破千聖がハリセンで思い切り叩く。
すばらしいくらいにキレイな音が室内に響く。
これももう、見慣れてしまった。



「ってぇな!なぁにしやがんでぇ!?」
「てんてーん、うるさいナリよー」
「ちょちょっと今日はBOD?ボリューム大きめだよね?」
「だぁってよぉ、なんでこんなに毎日毎日詰め込まれて勉強し続けなきゃなんねーんだよ?」



心の底からそう思っている。
そうといわんばかりの発言には熱がこもっていた。



誰もが思うことだろう。
なぜ、勉強なんか?
面白くもなんともない。
それが一般的な考えだと、私も思う。
私だって、勉強が好きなわけではない。
ただ、やっているだけだ。
それを思うと彼らの発言には何も異論はない。



「・・・まぁ、確かにね」
「こんなことばっかりでよぉ、そろそろ我慢の限界だってーの!」



実際、そう思っているのは彼だけではない。
他の3人だってそうだ。
今までまともに勉強してこなかった彼らにとって、この補習は通常の人以上に辛いものでしかないだろう。



「んー、確かに、ちょちょーっと俺たちも怒っちゃいそうな感じ?」
「本当だぴょーん。ボクたちのこともぉ、少しは考えてほしいですなぁ~」



こうなってくると、勉強は進まなくなる。
この話に関しての熱の入れっぷりはすさまじいものがある。



「あーあ、あいつらギャフンと言わせる方法ねぇかなー」
「やめなさい、あとで大変になるのは貴方たちよ?」



また古い言葉を使って、と思うがそこは口に出さない。
ただでさえ気が立っている状態だ。
これ以上は補習も無理だろう。



「ほら、あと1問で今日は終わり。だからあとちょっとがんばって」
「今日は大分早いが、いいのか?」
「いいのよ、たまには早く終わらせた方が明日も楽でしょ?」
「さっすが!わかってんじゃねーか!!」



途端に直る機嫌。
全員先ほどより幾分か空気は和らいだ。


これはいつか全面衝突するな・・・


そんなことを考えながら天井を見上げる。
この事態を、先生は理解できているのだろうか。
方丈慧は、そこに気付くほど周囲は見えていない。




じゃあ・・・方丈那智、は?




4人の考え、もとい関わる全ての人間の思考を先読みして動こうとする奴だ。
きっと、わかってる。



でも、何もしないで見ているだけ。



何がしたいのか、正直わからない。
ただ、それを私が深く突っ込んでまでこの事態をどうしようかなんて思わない。
それは私がやるべきことではないから。




「わーい!終わったぴょーん!」




威勢のいい掛け声と共にプリントが渡される。というより、抱きつかれる。
このスキンシップにもなれてしまった辺り、私も大分適応してきてしまっている。



「はいはい、できたのはいいからくっつかないの」
「えー?なんでなんでー?」
「なんでも、よ」
「ンフッ、ダリアちゃんたら照れてる?」
「違います。そして私はダリアなんかじゃないわよ」



プリントを受け取りながら適当に受け流す。
のったら余計にややこしくなるからね。



「ぶー。ちゃんひどいですなぁ」
「そうそう。俺たちもうお友達なんだから」
「おともだち?」



思わず繰り返す。
お友達・・・?



「当然だろーが!なぁ千?」
「面倒を起こさない奴ならいくらでも構わん」



思わず何も言えなくなる。
正直、そんなこと考えていなかった。
友達になるとか、そういうものは無縁の関係だと思っていた。



「・・・私が?貴方たちと友達?」
「は?何言ってんでぇ?とっくにそうじゃねーか」



お前はアホか?といわんばかりの顔で答えられる。
友達・・・友達・・・




あれ?考えれば考えるほどわからなくなる。




友達ってなんだっけ・・・?




「・・・ぴーちゃん?ちょおっといいですかなぁ?」
「なになにぃ?やっくん」
ちゃんてぇ、もしかしてお友達とかいない子?」
「んー、そこはなんともいえないようないえちゃうような感じ?というか、友達いないっていうより、友達とか作らない感じ?」



私が考え込む横で、普通に話し始める二人。


そうか、今まで気にしてなかったのだが。



「・・・確かに、友達とか作ろうと思わなかったわ」



別に人が嫌いとかそういうことではない。
必要だと思ったことはなかったからだ。
慣れ親しむことは苦手だったし、普段から1人で動いている身としては遊びに誘うことも誘われることもなかった。
もちろん、普段接するクラスメイトなどとは普通に話すし、関わることは普通にある。
だが、それ以上何かしようとは思わなかったのだ。



「・・・おい天、こいつ実は阿呆なんじゃないか?」
「あぁ、俺様もそう思うぜ・・・」



わかった途端、なんだかむずがゆい気持ちになる。
なんだかソワソワする。
友達というのはなんだかわかってないが、ただこの4人のつながりに少し足を踏み入れたということで。
別にそこまで深く入り込みたいとか思っているわけではないが、それでも少しだけ好奇心はある。
こんなことを考えているとも、自分では思っていなかった。


なんだか恥ずかしくて、ちょっと嬉しくて。
悪い気分では、ない。



「ま、んなことはどうだっていいんでぇ!それなら今からダチになりゃいいってことだろ?」
「てんてんのぉ、言うとおりですぴょん!今日からぁ、ボクたちお友達ナリよ~」



ここまで何も考えずに話が進むとかえって楽になる。
ただ、なんだか気恥ずかしさがあって、うまく答えられない。



「・・・まぁ、友達になるならもっと頭よくなってよね」
「んだとぉ!俺様は天才でぇ!!」
「お前はアホの天才だこのアホ」



そういってお約束のハリセンがよい音を奏でる。
4人に混ざって、自然と笑っている自分がいた。
友達っていいものなのかもしれない。
初めてそう思った。



変なことを、変な人たちに教わるものだな。



いくら頭がよくても、精神的な部分はよくならない。
どこかの双子にも、教えてあげたいくらいだ。


お互いが歩み寄ればいいのに。



そんなのんきな考えが、甘かったと知ったのはそれから数日後のことだった。










***


久々の更新です。
ところで、那智が出ません!
出そうと思って次にまわしました・・・

サクサク進められる日はくるのだろうか・・・


2010/06/04