今日の補習は休み。
この日が一番退屈な日になる。
いつもならつまらなさをどうしようと思うんだけど。
「今日、放課後補習の話し合いね」
なんて、に言われてしまった。
それだけで、浮かれてるんだから・・・やっぱり重症なのかな、おれ。

実は、少しだけ気まずさもあった。
好きって言ったり、好きかわかんないって言ったり。
よくわかんないことばっかり言ってる気がするし。
自分の欲望のまま、を抱きしめたり。
いい匂いがして、そのままずっとこうしていたいって思ったり。
最初は本当に、興味があるだけだったのに。
知れば知るほど、もっと知りたくなる。
触れたくなる。
・・・これって恋なのかな。
A4やB6と絡んでるのも、見てて楽しくないし。
もっと傍にいたい。
好きなんだ、って最初は思った。
でも、なんだか違うのかもしれないとも思ってる。
人を好きになんてなったことないからっていうのもある。
好き。でもこれって恋?
・・・今のおれにはよくわかんない。
放課後、本当ならすぐにでもClassZに行きたいところだったけど。
残念ながら今日は生徒会の仕事。
慧が補習でいない分、おれがやらなくちゃならない。
・・・こういう時に限って、もうすぐ体育祭もあるから忙しい。
一応には伝えてあるんだけど「できるだけ待ってる」とだけ言われた。
だから早く終わらせなくちゃ。
「ボンバー、あの書類どこだよ?」
「あ、それならここにあるっす!」
書類に目を通すのもあまり好きじゃない。
いつも慧に任せっきりだしね。
でも今日は、そんなこと言ってられるか。
おれの予定では、15分くらいで仕事を片付ける予定だった。
・・・気付いた時には、1時間が経過していたけど。
「やっと終わった・・・!」
「お疲れ様です、那智さ・・・」
陽佑の言葉なんて、最後まで聞いてられない。
作業終了とほぼ同時に、おれは生徒会室を飛び出した。
***
いつもの癖が抜けず、早足でClassZへ向かう。
こんなときに慧に見つかったりしたら更に行くのが遅くなるっていうのもあるけど。
「くそっ、なんでClassZはこんな遠いんだよ・・・」
こういうときばかりは、近ければいいのにと思う。
普段はうるさいから遠慮するけど。
ようやくClassZの前に着いた。
は、いるのか。
少し不安になりながらゆっくり教室のドアを開く。
「・・・」
普段うるさい教室は、しんと静まり返っていた。
だが、教室にはいた。
机に伏せて、寝てるけど。
一気に力が抜ける。
同時に、いてくれてよかったとも思う。
起こさないように静かに隣の椅子を引き、近くに座る。
横を向いてはいたが、髪が顔にかかり表情は見えなかった。
「ったく・・・人が仕事頑張ってきたっていうのに」
静かな教室には、おれの声と小さなの寝息しか聞こえない。
「気持ちよさそうに寝やがって・・・」
しばらく、そのままを眺める。
彼女は未だに夢の中。
起こしてもいい。
でも、もう少しこのままでいたかった。
「・・・ほんと、なんでだよ」
小さく呟く。
「なんで、こんな気になるんだよ・・・」
自分ではわからない。
のような女、夜の街にはたくさんいる。
性格なんて、かわいくないし。
普通さ、嫌いとか思っても言わないよね。
おれのことなんて好いてくれそうにもないしさ。
いっつも冷静で、あんまり自分のこと見せようとしない。
それなのに、こんなにも惹かれる。
外見?それだけじゃない。
もっと美人なんてたくさんいる。
ただ、あんなに綺麗な瞳は初めて見た。
吸い込まれそうなくらい、まっすぐで、偽りのない瞳。
そこに惹かれたのは事実。
そこから、もっと知りたくなって。
地が出るとすごい態度悪くて。
なんだかんだ補習はしっかりやってくれて、頭の回転もよくて。
でも夜はやめられなくて。
群れたりはせず、1人で夜を楽しんでる。
それなのに、ぬいぐるみとか好きな辺りは普通の女みたい。
あと、たまにとても楽しそうに笑う。
はおれにないもの、たくさん持ってる。
それから・・・ちょっと慧みたい。
まっすぐなとこ、おれの中身を見てくれるとこ。
自分に正直になれるとこ。
だから、余計に惹かれるんだ。
なんだか、からだが疼く。
の頬に触れたくて、手を伸ばす。
指で、ついと突く。
あ・・・柔らかい。
なんだか、それだけで心臓が高鳴る。
は全く気付いてないのか、突いても起きることなく寝ている。
「・・・んなに無防備だと・・・襲うぞ・・・?」
指で突きながら呟く。
柔らかな感触は、おれをさらに動かせる。
そのまま、ゆっくりと髪を撫でる。
さらさらで、綺麗な髪。
顔を隠している髪を、ゆっくり耳へかける。
いつもまっすぐ見つめる瞳は閉じ、寝顔が見えた。
普段とは全く違って表情は穏やかで。
鼓動が、早まる。
もう、自分の動きは制御できなかった。
ゆっくりと顔を近付ける。
心臓が、大きく音をたてて、口から出るんじゃないかと思った。
そしてそのまま、唇は頬に触れた。
「・・・なに、してんだおれ・・・」
呟いてゆっくり立ち上がる。
は、まだ寝てる。
気付かれて、ない。
なんだか、自分が自分じゃない感じだった。
もうこのまま、ここにいられない。
おれはそのまま、ClassZを出て行った。
しん、と静まった教室。
ゆっくり、は目を開く。
起き上がると、無意識に手が頬へ触れた。
感触が、残ってる。
「・・・ばか」
ただ一言、もういない相手に呟いた。
***
那智さんご乱心(笑)
いつまでもこういう考えをぐるぐるとさせてほしい。
2009/09/06