「決めたぞ、那智」
朝、出会って開口一番言われた言葉。
またにいさんは朝から補習のことばっか考えてたんだろうなー。
そこがにいさんらしくていいと思うけどね。
「ん?なにをー?」
「を放課後、生徒会室に連れて来てくれないか?」
「・・・はい?」
A4の話かと思ったらの名前が出た。
ちょっと、いやかなり想定外の答えにしばらく返答に困った。
あのテストの後、慧はのことを調べたようだ。
あのClassZにいながら、成績はトップクラスなヤツ、気になるよね。
その結果、彼女は幼少の頃からすばらしい成績の持ち主だということがわかった。
俗に言う、天才?
「ただ、生活態度がなっていない」
夜遊びの情報はもう周知の事実らしい。
ただ、夜遊びの現場を押さえたヤツが今までにいないという。
・・・いないんじゃなくて、いなくなってるんだろうな。
先日のことを思い出して一人頷く。
「そこで、生活態度を正すためにも彼女にA4の補習に参加してもらうことにした」
「んー、でもは補習する必要ないよ?」
「あぁ、だから補習をさせる側・・・つまり僕達のサポートだ」
ということは。
「4対4になるからまぁフェアではあるよね~」
なんていってるけど。
心の中じゃ『楽しくなってきたじゃん』なんて、思ってる。
あぁ、早く放課後にならないかな。
あの人の、困った顔が見たい。
* liebt *
意外にもはすんなり生徒会室まで来ることを受け入れた。
なんか、調子が抜ける。
あからさまに嫌そうな顔してくると思ってたのにな。
「生徒会室なんて行くこともうないだろうしね」
貴重な体験よ、とのんきに言ってる。
貴重、なのは今だけになると思うけどね。
「・・・それより、近いんだけど?方丈君?」
べったり横に寄り添うように歩いてたら、ちらっと横目で見て言われる。
特にすることもなかったからスキンシップをはかっただけなんだけど。
「いーじゃーん?おれにべったりされるなんて超貴重だよ?」
「えぇそうねー、でも重くて邪魔だから嫌気がするだけねー」
本当に面倒くさそうに言うとするりとおれの横から抜け出る。
彼女の動きはすごいというより極自然に行われる動作に見えて時折びっくりすることがある。
今のもそう。本当に無駄な動きがない。
綺麗な動き、って言えばいいのかな。
なんて考えてたら生徒会室に着いてしまった。
つまんないの。
「にいさーん、連れてきたよー」
「あぁ、ありがとう那智」
慧は作業の手を止めておれたちを見る。
今日は生徒会の活動という活動はないからここは静かだ。
「さん、こちらにどうぞ」
「あ、どうも」
吾妻が席へと促し、お茶を注ぐ。
おれは極々自然に隣へ座り、自然に置かれたお茶を飲む。
「今日ここに来てもらったのはほかでもない」
座ったのを確認して慧は話を切り出す。
当のは話を聞く態度を取ることはなく、のんきにお茶をすすっている。
「明日より、お前にはA4の補習に参加してもらう」
「・・・はい?」
今朝のおれと全く同じような表情、声で慧の発言にこたえる。
多分、全く想像してない要望だったんだろう。
思わずお茶をこぼすんじゃないかと冷や冷やした。
「もちろん、お前が補習を受けるのではない。A4の奴等を僕達と共に補習してほしい。」
「え、いや、私も一応A4のいるClassZなんですけど・・・?」
「成績だけを見ればお前はClassAにいてもおかしくはない成績だ。だから頼んでいる」
「あ、それ頼んでる態度だったんですね・・・」
思わず呟かれた言葉に吹きだしてしまった。
慧の言葉は命令口調が多いからね・・・でもそれを本人目の前で言うとか・・・。
「くくっ・・・」
思わず声が出そうになるのを必死で抑える。
慧は何事だと言わんばかりの顔でこっちを見るし、は呆れたような表情。
・・・あー、やっぱ面白い。
「とにかく、やってくれるな?」
「嫌です」
お決まりの即答では答える。
おれは更に笑いを抑えるのに必死だった。
「・・・しかし、お前の生活態度は最悪だ」
慧はおされることなく話を続ける。
生活態度のことを言われた途端、少しだけの身体が動いた。
「生活態度を更生させるために、A4共の相手をしてもらうぞ」
「・・・やっぱり頼んでる態度じゃないですよね、それ」
深くため息をつきながらはお茶を飲む。
このまま観念するのかと思ってたら。
「1つ、条件を」
なんて言い始めた。
この場で、自分の意見を主張しようというのか。
普通、ここまで言われたら引き下がるしかないのに。
「なんだ?」
「補習はやります。ですが、補習時間以外で私との関わりは一切持たないでいただきたいです」
「は?」
今度はおれが間抜けな声を出す番だった。
補習以外で一切関わりを持たない、だ?
それは、一種の拒絶反応のようだった。
同時に、1つ気付いたことがある。
人と、関わることが大嫌いなんだということ。
なんでそんなに、関わりを断とうとするんだろうか。
慧は目をぱちくりさせてを見ている。
意味がわからない、目がそう言ってる。
「もちろん、補習に必要な話し合いがあるのならそれには参加します。ですがそれ以外でのプライベートな時間にまでそういった関わりは持ちたくないんです」
「いや、しかし・・・」
うまく返す言葉が見つからないのか、慧は言い返せずにいる。
これは、おれがなんとかしないと。
楽しみが、なくなるじゃん。
「ちょーっとまったー。それって、こっちの条件飲めてないんじゃない?」
おれが声をあげるとはおれに視線を向ける。
また、あのまっすぐな瞳。でも完璧に不機嫌な表情。
いいね、ぞくぞくしちゃう。
・・・おれ、変態じゃないよね?
「生活態度更生が目的の補習参加なのに、その条件じゃ生活態度が改まってるか確認できないでしょ」
「っ、確かに!」
慧がハッとしたように声を出す。
それと同時にがふぅ、とつまらなそうに息を吐いた。
これは、ちょっとした賭けだった。
もし、納得できずに俺の話をされたら?
そう思うと少しスリルもあった。
でも何より、時間の制約をされてしまうことだけは避けたかった。
さて、どうでるか。
「はぁ・・・生徒会長さん?」
「な、なんだ?」
少し苛立ったような、そんな声で今度は慧を見る。
「補習は、放課後?」
***
「・・・以上が、A4の成績その他データと今後の予定だ」
「本当・・・最低な成績ね」
一通り説明を終えた慧に、呆れた声の。
普通に生きてる人間には理解できない成績をあげてるあの4人のことなんだから頷ける。
本当なに考えて生きてるんだ、こいつら。
「これからあの教師と4人で補習にあたるわけだが・・・こっちも生徒会の仕事があるから2人同時に抜けるわけにはいかない」
予定表をめくりながら慧が話しだす。
「なので二手に分かれて補習を担当する」
2人。
淡い期待が生まれる。
「那智、と2人で補習を行えるか?」
「もっちろん♪」
のように即答する。
当のはあからさまに嫌そうだった。
「じゃあそれで頼む。今日は以上だ。明日から頼むぞ」
その言葉とほぼ同時には席を立つ。
「お茶、ご馳走様」
それだけ言うと生徒会室を出て行く。
「あ、にいさん、おれあいつ送ってくるよ」
「そうだな、頼む」
慧に承諾を得て、俺は彼女を追いかけた。
「、待ってよ」
「・・・何か用?」
やっとのことで追いつくとは相変わらず不機嫌そうだった。
「送ってくよ。おれらのせいで遅くなったわけだし」
「大丈夫よ、夜道には慣れてるの知ってるでしょう?」
「はいはい、いーからいーから」
言い合いをしていたら話にならない。
隣を歩くおれに諦めもあってか、は何も言わなかった。
「承諾してくれてありがとね」
「逃げられそうにもなかったしね・・・それにあの成績見たらなんか頼まれるのもわかる気がしたわ」
軽く笑いながら彼女は言う。
あれ?少し空気がやさしい?
なんだかわからないけど、ちょっとだけ嬉しい。
「まぁ、あそこで条件出すとは思わなかったけどねー」
「否定されることはわかってたけどちょっと苛々したからね・・・まぁ最初お兄さんに突っ込まれなくてびっくりしたけど」
そんなことも包み隠さずに話してくる。
「それにしてもって成績いいんだねー。勉強しなそうなのに」
「失礼ね。否定はしないけど」
「で、おれのこと名前で呼んでくれないの?」
「えぇもちろん」
相変わらずの即答っぷりでは答える。
そういえば聞けてなかった。嫌いの理由。
「おれのこと、嫌いなんだよね?」
それだけ言うと驚いたように目を開いてこちらを見る。
そして突然・・・笑い出した。
初めて、隣でみせられる笑顔。
なぜか、ドキドキする。
「・・・何笑ってんだよ」
「っ・・・普通、そんなこと直接聞く?」
「別にいーじゃん、実際言われてんだし・・・」
それだけ言うのが精一杯だった。
なんだか作るのもうまくできず、段々態度が悪くなる。
その様子には更に笑ってる。
「そうね・・・」
なんとか笑いを抑えながらが切り出す。
心臓が、高鳴りする。
こんなに緊張してるの、生まれて初めてだ。
「嘘偽り持ってる貴方は、嫌いかな」
はっきりと、そう口にする。
でもなんでだろう、存在を否定されたようなものなのに高鳴りが収まらない。
「・・・でも、俺はが気に入ったんだけどな」
「そうやって、好奇心だけで近寄るヤツも嫌いなの」
「好奇心だけじゃない」
それだけは少し強く、呟く。
これは本当だ。
俺が、興味持ったのはの夜の姿だっていうのは本当。
ただ、それ以上に。
「俺、をもっと知りたい」
夜の姿だけじゃなくて。
「の全部が見たい」
だから、もっと傍にいたい。
「・・・貴方、変な人ね」
そういうの顔は、少しだけ穏やかに見えた。
あぁ、なんだか更にドキドキする。
こんな気持ち知らない。
これって、恋してる?
「なんとでも言えよ。これは俺の本心だし」
「・・・あははっ!」
少しふて腐れて言うと、堪えきれないように彼女が大笑いする。
なんだかとても楽しそうに笑ってる。
もしできるなら、抱きしめたい。
「もうだめ・・・いつもあんなにマイペースな感じなのに・・・子供みたいなこというんだから・・・」
「・・・笑いすぎだろ」
視線を反らす。
そんな笑顔、反則だ。
でも彼女はずっと笑ってる。
我慢の限界だった。
気付いた時には抱きしめてた。
はびっくりしたように笑いをぴたりと止めた。
「・・・ちょっと?」
「・・・おれ、のこと好きかも」
「はい?」
間抜けな声でが言う。
今度は俺が笑う番だった。
「くっ・・・変な声・・・」
「貴方が変なこと言うからでしょ!離れなさい!」
思い切り引き離される。
もうはいつもの不機嫌顔だった。
「いやぁ、なんか気付いたんだよね~。おれ、みたいな人に会いたかったんだってこと」
「何言ってるかわかんないし・・・」
は警戒するように距離をとる。
「とにかく、おれのこと好きだから。よろしくね~」
「いや、無理だって」
また即答されたけどそんなの無視。
その場でUターンして俺は歩き出した。
今、一緒にいたらとめられなそうだから。
明日からの補習、なくなったら大変だしね。
もっとを知らなくちゃいけないんだから。
***
那智は不機嫌になると子供のような気がします。
それにしてもエセすぎてびびります。
そして急展開すぎてびびります。
キャラソン聞いたんでぜひともドイツ語を使いたかった(笑)
2009/08/23