あぁ、あの子何してるかな。

こんなことしか考えてないなんて、俺って病気なんじゃない?

でも仕方ないよね。

こんな面白いこと、久々なんだから。





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朝、外を見ると慧がラジオ体操をしていた。
ということは登校時間までには時間があるな。
ていうか、朝からよくやるなぁ・・・おれには絶対無理。

のんきに考えながら窓の外に顔を出す。


「おはよう、にいさん」
「あぁ、おはよう那智」


ラジオ体操しながら慧は答えた。
慧はとっても真面目。
おれなんか到底かなわないくらい真面目で、本当尊敬するよ。



おれは慧が大事。



誰よりも、一番近い存在で、一番理解してくれる人。
おれのこと、誰よりも認めてくれるし、おれも慧だけは認めてる。
ブラコンじゃないよ。これって双子なんだから当然じゃない?
おれたちは2人で1つ。
だから、慧はおれが守るんだ。もう小さいころから決めてる。



これだけは、何があっても。



だから、その分溜まる鬱陶しさは、違うところで発散させたいんだよ。



慧には言えないところで、ね。



心配だけは、かけたくない。



「そうだ那智」


体操をひと段落した慧がおれに話しかける。

「今日からClassZの補習業務に関わることになった」
「は?ClassZ?」

あぁ、なんとなく覚えてる。
阿呆集団のクラスを作って、そこに編入生を詰め込むっていう理事長のよくわかんない提案ね。
一芸に秀でてるけど他はからっきしダメ集団なんて、おれとは無縁だと思ってたけど。

「あぁ、大変不本意だが理事長と学園のためだ」

慧は理事長をすごく尊敬してるからなぁ。
おれはあの人胡散臭いからいやなんだけど。


ま、いっか。


まずはClassZから、人探しだ。


あんなとこふらついてるヤツなんだし。そこにいてもおかしくないよね。


聖帝にいることだけは、昨日確信を持った。


名前も知らないけど、絶対会える。信じてる。


早く、会いたい。


***



「遅い!!何をしている!!!」


また聞こえた慧の怒鳴り声。
ClassZの担任、真奈美せんせいは新任。
頼りなさがあふれてるから、慧の声も一層強くなってく。
せんせいはせんせいで「先生に命令するんじゃありません!」なんて慧と言い合いしながら歩いてる。
・・・後ろから見てると夫婦漫才みたいなんだけど。


とにかく、初めてのClassZ。


開けてびっくり見てびっくり。


半分くらい生徒はいないし、いる生徒も何かしら遊んでる。


でも、慧の雷が即落ちるのも仕方ないな。なんてのんきに考えてたりして。




「今日はお前達の実力を再度測るため、簡単なテストを行う!」

慧の一言でクラスはブーイングに包まれた。
おーおー。これはまた息がぴったり。

「うるさい!お前達の実力を知らねばこちらも何もできないだろう!!」

生徒はだいぶそろってきた。
あのA4共もアホサイユにいたのを連行したし、遅刻者もだいぶ集まってあとは3人ほどかな、いないのは。


今のとこ、彼女は見当たらない。


もしかしてハズレかな。


そうするとまた1から探しに行かなくちゃなー。面倒。


「那智」
「ん?なーに?」

プリントを配っていたら慧に呼ばれた。
手持ちを全て配り終え、慧の元へ向かう。

「あと3人、いないやつらは基本的に学校にはいるがサボっている奴等のようだ」
「ふむふむ、で、それをおれが探せばいいの?」
「あぁ、頼めるか?」

そういって慧はおれに3人の名前を書いた紙を渡す。

慧のためなら、なんだってしちゃうのがおれです。

ふたつ返事で頷いておれはテスト中も騒がしい教室を後にした。



***



「2人目みーっけ」
「げっ、方丈!」


1人目は校舎裏、2人目は屋上で捕獲した。
戻らないと即停学かなー、なんて冗談で言ってさっさとクラスに戻す。
女、男、と見つけたけど俺の探してるやつじゃなかった。
あと1人は女。
名前は「」か。


これが違ったら残念だなぁ。


なんて思っているんだけど。


「・・・いない」


いくら探しても見当たらない。
サボりスポットは全部探した気がする。
アホサイユはA4だけだし、屋上・校舎裏はもう人の気配はなかった。
図書室・科学室、あんまり使われてない教室を見てたけどそれでも人は見つからない。


・・・本当にいるのか?こいつ。


今日に限って休みとかだったら、おれ、怒るよ?


なんて思って歩いてると職員室前に出た。
職員室はなんだかB6っていうせんせいたちが来てからうるさくなったな。
GTRって静かな方だったんだなぁってシミジミ思っちゃうよね。
廊下まで声がするし。



「えー!ちゃんってお化粧とか全くしないのー!?」



そうそう、こうして基本的に風門寺せんせいとかがね・・・

ん?

思わず職員室のドアを開けた。

そこには風門寺せんせいとのんきにお茶してる生徒が1人。





・・・いた。





予想外の場所に、予想以上の人が。






「そうです。面倒そうだし」
「えー、もったいない!!そうだっ!今度ゴロちゃんがポペッと教えてあげる!」
「いいです、お金かかるし」

俺の登場には全く気付いてない2人。
でもおれはもう、彼女しか見えてなかった。

やっと見つけた。

「・・・そこのサボり魔さん、お迎えですよー?」
「・・・げ」

あからさまに嫌そうな声と、驚きの表情を見せる。
おれが来るとは思わなかったんだろうな。
挨拶代わりににっこりと笑っておいた。

「さ、風門寺せんせいも生徒のサボりに乗っからないのー」
「え〜?生徒とのコミュニケーションも大事なんだよ〜?ねっ?」
「そうですよねー」

なんにも気にしてないように2人は話し始める。
うーん、無理矢理連れて行かなくちゃな。
そう思うとの腕を引っ張り、無理矢理立たせる。

「はい、今からテストなんで。失礼しましたー」
「テスト?面倒くさい・・・」

特に抵抗もしないけどやる気も見せずには引きずられる様に歩き出す。

「あ、風門寺先生。お茶ご馳走様でした」
「い〜え〜。またいつでも来てね〜」


***


「やーっと見つけたよ。さん?」
「見つけるのが遅いですね、方丈那智君?」

嫌味のように言ったら嫌味で返される。
教室に戻るまでの短い時間が、名前も知って初めてのコンタクト。
おれの気持ちは、高鳴っていた。


「・・・会いたかった。」


つい口に出してしまいはっと口元をおさえる。
正直に言ってるとか、おれってどうしちゃってるんだろう。
はおれの言葉に少しだけびっくりしたようにこちらを見る。

「・・・私は、会いたくなかったわ」

ちょっと肩をすくめて彼女は言った。



彼女は、かわいい。
綺麗とは違う。
なんだか小さくて、惚れた男なら守ってあげようとか考えちゃうんだろうな。



でも、実際はとっても強いんだろうけど。



「そんなこと言わないでよー。色々秘密を共有してる仲じゃない」
「そこが面倒なのよね・・・」


はぁ、とため息をつかれた。
面倒なことはしたくない、とでも言いたいようだ。
なんかこいつ、不破っちょみたいなこと言うな。

「おれはのこと気に入ったからね〜、もっともっと話したいけど?」
「私は特にそんなこともないわ。それより普通に名前で呼ぶのね」
「おれのことも那智って呼んでいいんだよ〜?」
「結構です」

彼女は常に即答、そしてほぼ否定。

なんだか、嫌われてるんじゃないか?と思うくらいの反応しか返ってこない。

「うーん、おれのことそんなに嫌い?」
「そうね、好きか嫌いかなら嫌いかしらね」

追い討ちをかけるようにはっきり言われる。
ちょっと、本気で傷つくんだけど。


「おれはのこと気に入ってるんだけどなー」
「・・・あなたのような好奇心だけで近寄る人なんて、絶対好きになんてなれないわ」



そう呟かれた言葉は、普段と違う感じがした。



なんだ?この違和感。



そうこうしているうちに教室についてしまった。
残念、とか思ってる間もなくはさっさとドアを開けて中に入る。

「那智、ご苦労だったな」
「にいさん、これで全員だよね?」

は怒られるのを避けるためにかさっさと自席に着くと置かれていたテストを手に取った。
あと残り時間は30分。
こりゃ散々な結果になりそうだ。
真奈美先生も心配そうにに声をかけるが笑顔で大丈夫、と答えている。



あの笑顔、おれには見せてくれないな。



ま、当然っちゃあ当然か。



***



無事にテストも終わり、生徒会室へと戻る。
このテストはおれと慧が作ったもの。だから採点もおれたちでしなくちゃならない。
本当なら面倒なんだけど、意外にこの採点は悪くない。


なんてったってClassZ。


解答がヒドイんだもん。


とりあえず、成っちょはわからない解答欄に全部「ヨメ」って書くし。
空白があまり見当たらないのがいいよね。
時間かかるけど意味不明で楽しいし。

特におれが作った問題はひねくれてるから解けるヤツなんて早々いないし。
まぁ、まさか問題に文句言われる解答もらうとは思わなかったけど。


「・・・ん?」


突然、慧が疑問を持った声をあげた。
そして同時に採点の手を止める。

「どしたの?慧」
「いや・・・の採点なんだが・・・」
の?」

60分あったテストの半分で答えた
全部埋まることもなかったんじゃないかと思っていたんだけど。

覗いた答案は、すごいことになっていた。

「・・・全部、あってるの?」
「あぁ、全問正解だ」

解答欄は全て埋められ、全ての回答にはマルがついていた。
おれも、慧でさえも予想してなかったことだ。

「カンニングとかしたんじゃないの?」
「いや、僕と新任が常に見張っていた。それに那智、お前も見ていただろう」

確かに見ていた。
特におれなんて、自慢じゃないけどばっか見てたんだから。

もしかして。

「頭は、いいとか?」
「あぁ、そうだろうな・・・僕としたことが情報を見落とすとは・・・一度ClassZの生徒情報を見直すしかないな」

慧は何かファイルを取り出し真剣に読み始めた。

おれは採点をやめての答案を見る。


綺麗な字だった。


間違いがない、綺麗な答案。
名前欄にしっかりと書かれたの名前。


頭がいいのに、夜を1人で歩く彼女。


何を思って、いつも歩いているんだろう。


また、夜に会えないかな。


本当の貴方を もっと見たい。


おれのこと楽しませてくれるような、そんな姿を、ね。






***

甘くなる展開が1ミリも感じられません。
どうしよう(笑)

2009/08/21